第79章 彼女の演奏と同じように、うっとりとさせられる

橘結衣は、理由もなく肌を焼くような視線を感じて、ふと顔を上げた。

見ると、田中未菜がなぜか床に正座していて、うっとりした目でこちらを見つめている。

いや、なんで急にそんな顔になるの。

橘結衣は背筋がひやりとして――次の瞬間、気づいた。

田中未菜が見つめているのは自分じゃない。自分の手だ。

なるほど。田中未菜は、彼女が弾いているピアノが好きなんだ。

それなら話は早い。

橘結衣はほっとして、演奏を続けた。

……でも、熱い視線はそれだけじゃない気がする。

背中のほうからも、もう一本、強烈な視線が刺さってくる。無視できないほど濃くて、重い。

橘結衣は仕方なく振り返った。

そこに...

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